今月から始まった新聞小説「流人道中記」が良い。
読売新聞朝刊に、浅田次郎氏が書いている。
貧乏同心の倅が与力に婿で入った若者と、
罪人の旗本と二人で江戸から松前までの物語。
昨今の時代小説もいろいろとあるが、
浅田氏の「壬生義士伝」「一路」は今でも、
本屋に並んでいるほど人気だ。
最近作者の勉強不足もかなり見かけることが多い。
たとえば、江戸時代の時刻=不定時法なんだが、
殆どが、明け六つ(午前6時ごろ)とか、
暮れ六つ(午後6時ごろ)とか、出している。
そもそも、明け六つは今の日の出時刻の36分前で、
夏至のころは、明け六つ=03:50ごろで、
冬至ころは、明け六つ=06:15頃になる。
同様に、暮れ六つは日没36分後になり、
これも季節で大きく時間が変わる。
浅田氏は、単に「亥」などと書いて、
余計な現在時など出さないのが嬉しい。
自分で考えられるようになっている?
一番嬉しかったのが・・・2度ほど出てたが、
「まん真ん中」と書いてあったことだ。
我々の若いころから、東京では「まん真ん中」で、
江戸時代なら、なおさらこう言ってただろう。
ところが、最近他の作者の時代物を読むと、
「ど真ん中」などと出ていて、違和感があった。
作者は江戸時代の言葉に無頓着な地方人なんだろう。
浅田氏は、江戸っ子だけあって気持ちが良いが。
昔、大阪に行ったところ「どあほう」や「どxxx」と、
矢鱈と「ど」がついて居て驚いたもんだった。
また名古屋・岐阜にいくと「どたわけ」など「ど」がつく。
当時から、野球では西が幅を利かせていたのだろう、
ボールを「ど真ん中」と言っていたようだった。
「バッチング」も西の野球言葉だったのかな?
これは、ピッチングから来たものとおもう。
江戸時代の時刻、現在の時刻に書き直さずとも、
小説内の一部分なので、そのままで良いでしょう。
いまさら、午前6時などと書く必要もなさそうだ。
江戸の言葉にしても、浅田氏は歯切れが良い。
会話も読んでいて楽しくなる。
蝦夷・松前までまだ当分掛かるが、
毎朝新聞を読むのが楽しみになっている。
昨日・今日と、鰻のご馳走での面白い会話に、
思わず笑って楽しんでしまった。